『―&―』


BY ゆのさま



「直江ぇ。」
高耶が甘えた声でしがみついて来て、一瞬ドキリとする。
高耶の寝顔を確認すると、しがみつかせたまま仰向けに寝転がった。

ベッドシーツはさっきまでの激しい情交のせいで乱れたまま。
珍しく高耶が求めてきた。
最近は忙しくてベッドに入れば即寝てしまう生活が続いていたから、その反動だろうか・・。
(どちらにしても、寂しい思いをさせていた事には変わりないな。)
と思う。もともと感情を表すのがあまり得意ではない高耶だ。
自分から求めることを恥ずかしがってか、あまりしない。
もっと求めて、甘えてくれて構わないのに。

胸に触れる、柔らかい髪を優しく梳く。
安らかな寝息を聞いていると安心する。
同じ空間に最愛の人がいる。
ただそれだけのことで、こんなに幸せな気持ちになれる。

しばらく天井を見上げて物想いに沈んでいたが、ふと、のどに渇きを覚えた。
(水でも飲むか。)
高耶をそっと隣に横たえて、床に足を下ろす。
床の冷えた感触が素足に気持ちいい。
カーテンの閉められていないリビングに月の光が落ちていた。




食器棚の中にはペアのカップの数々。
それを見る度に彼の存在を自分の側に感じられて嬉しくなる。

仕事から帰ってきたときに、「お帰り」と笑顔で出迎えてくれるとき。
疲れているときにさりげなく黙って側にいてくれたり。
嫌な目覚めのときに隣にぬくもりがあったり―――――




日常にある、小さくてささやかな幸せ。



「・・・え、直江!」
呼ばれて目を覚ますと目の前にエプロン姿の高耶がいた。
「もう起きないと会社に遅刻するぞ。」
鮮やかに笑って言う。
それを眩しげに見つめて起き上がると、高耶が首に腕を回して頬に唇を落とした。
一瞬鼓動が跳ね上がる。
けれど、それだけですぐに離れた恋人を惜しげに見遣ると、
「・・それだけですか?」
不満そうに言う。
「ダメ。早く着替えて顔洗って来い。」
笑って言う高耶に、はいはい。と返事をしてベッドから立ち上がると、高耶を抱き寄せて強引にキスをする。
高耶は抗議の瞳を向けるが、それは一瞬で消え、嬉しそうな表情に変わる。
ふわりと笑うと、口調だけは素直じゃなく、ぶっきらぼうに「早くしろよ」と言って部屋を出て行ってしまった。

相変わらず素直になれない恋人に苦笑して。
着替えるためにクローゼットの扉を開ける。
その扉の裏の鏡で見た自分は、世界で一番幸せそうな笑みを湛えていた。




いつまでもこの日常が続くことを願う。
ささやかな幸せでも「幸せ」には違いないから―――――




†ゆの様コメント†
サイト1周年おめでとうございますvv
そして何より愛しの高耶さんvvお誕生日おめでとう☆

†椎名コメント†
ゆの様からの素晴しい頂き物です♪

高耶さんファンなのに、椎名の為に直江視点で書いて下さいました♪

ゆの様は、当サイト開設日から遊びに来て下さって、今では爛れたおつきあい(笑)をさせて頂いてますv
いつも本当にありがとう!これからもよろしくね!!