UNTITLED 1-5



BY SHIINA



 最初、高耶は引き抜かれたネクタイで、首を絞められて殺されるのだと思った。思わず妹のことを思った。
(美弥……!)

 だが、男の行動は違っていた。直江は高耶の手の動きを封じたまま、強引に俯せにさせて、その体の上に乗り上げ抵抗できないようにすると、ネクタイで後ろ手に縛り上げた。
 容赦のない縛り方に、高耶の口から思わず苦痛の声が漏れる。

「痛いですか?すみません、少しの間、我慢して下さいね……途中で解けてしまったら、あとであなたが泣くことになる。こうするのはあなたの為なんですよ、こうしておけば、これから起きることすべて、あなたは被害者でいられるのですから」

 直江は歪んだ笑を浮かべ、両手の自由を奪われた高耶を軽々と抱き上げると、ベッドの上に放り投げた。

「……ッ!」
 恐怖に怯えた高耶が半身を起こすよりも早く、直江は自らもベッドに上がると、高耶の上に馬乗りになった。起き上がろうとしていた体は、軽く肩を押さえつけられただけで、ベッドに沈む。

 自分の体重と男の体重がかかり、背中で戒められた腕が悲鳴をあげるが、その痛みも感じないほど高耶はパニックに陥っていた。

 ようやく、これから男がしようとしている行為に思い当たったからだ。無論、高耶にはまだ経験のない、本来なら男と女がするべき行為。でもまさか、そんなバカな……!

「あんたっ……」
 恐怖に見開かれた瞳を、直江はうっとりと見つめた。
「直江、ですよ……こんなに震えて……大丈夫……優しくするから、怖がらないで」

 直江の指が高耶のシャツのボタンにかかる。今度こそ、男が本気で自分にそういう行為をしようとしているのだと思い知らされて、高耶が掠れた悲鳴をあげた。
「や、やめ……っ、」
「怖くない」

 すべてのボタンが外され、高耶のまだ幼さの残る少年然とした滑らかな肌が露になった。
 首に嵌め込まれた所有の証が痛々しさと、嗜虐心の両方を誘う。

 四百年もの間、焦がれた魂を宿した体が、あのひとが、自分のものになる……。
 あの時、あれほどまでに自分を拒絶したあの人が、今はこんなにも幼く、こんなに怯えて、腕の中にいる。

 目も眩むほどの狂気に支配された直江は、眦が切れそうなほど、両目を見開いておののく高耶の上に、ゆっくりと体を倒していった。

 直江は両手でおびえる頬を包み、触れるほど近くまで顔を寄せると、
「怖くないから……あなたが知らなかった大人の快楽を教えてあげる」
 そう囁いて、そのまま高耶の恐怖で乾ききった唇に、自分の唇を押し当てた。

「……やっ、嫌……ッ!!」
 掠れた声をあげて逃れようとするのを、直江は許さない。細い顎を掴んで、強引に唇を奪う。

「ンッ……!」
 息が止まるのではないかと思うほど、激しく唇を吸われ、高耶は激しく身をもがかせたが、縛られ、のしかかられた身ではどうしようもなかった。
「……ンン…、ウッ……」

 くらいつき、貪り尽くすような激しい口づけ。
 男の舌が唇を割って入ろうとするが、高耶は必死で唇を閉じていて応じない。直江は高耶の唇を激しく吸いあげながら、高耶の下半身に手を伸ばし、ジーンズのジッパーに手をかけた。

 それを感じた高耶が、尚ももがいて、男の唇を振り切り「やめろ」と叫んだが、直江は構わず、難なくジッパーを下ろして下着の中に手を差し込むと、萎えた肉魂を握り込んだ。

「アッ……!」
 生まれてはじめて、自分以外の人間の手で、その部分に触れられた高耶の体が硬直した。
 思わず声をあげて開いた唇に、すかさず舌を差し込み、逃れようとする舌に己の舌をからめ、存分に唾液を注ぎ込む。

「……ンンッ、……ウッ……」
 高耶の、飲むことを拒否した口端から銀の糸をひいて二人分の唾液が伝い、きつく閉じられた瞼からは、悔しさのあまり涙が零れ落ちた。

 散々に唇と柔らかな舌を貪った後、ようやく解放してやると、高耶が呼吸を求めて激しく喘いだ。

 直江は、頬を伝う涙を指先で拭ってやりながら、
「そんなに泣かないで、高耶さん……何も酷いことをしようとしているわけではないのですから……気持ちよくしてあげるだけから……全部、してあげる。一人でしたこと、あるでしょう?ここを、こうして……」

 そうして、下着の中に差し込まれたままの手が、その部分を憶えのある動きで刺激しはじめると、高耶は嫌々をするように首を振った。

「やめ……っ、やだ……なん、で……こんなっ……」
「あなたを……愛しているから」
 直江は囁いて、高耶のものを責める指に力を込めた。
「アアッ、やっ……!」

 男の手で嬲られ、先端が下着に擦れて、こんな状況だというのに高耶のものは形を変えつつあった。
「ほら……勃ってきましたよ。気持ちいい?……ああ、勃っているのはココだけじゃなくてココも……こんなに紅くなって……可愛いですよ」

 笑を洩した直江は、そう云って徐に高耶の胸の突起を唇に含んだ。

「やっ、!……やだっ、も、いや……」
 高耶が嫌がるのも構わず、きつく吸い上げ、軽く歯を立ててやる。その度に高耶がビクッと身を竦ませた。

「……やっ……やめ……ああ……、」
 胸と自身を指と唇で同時に責められ、今まで知っていたのとは比べ物にならない程の快楽に感じすぎて啜り泣く高耶の先端から、ぬるっとした液体が滲み出すのを感じた直江は、ようやく高耶から身を起こすと、
「そろそろ、邪魔なものはとってしまいましょうね」
と云って、高耶のジーンズに手をかけた。
 高耶は身を捩って抵抗したが、あっさり腰を押さえ付けられ、一気に下着ごと膝まで引きずり下ろされた。

「……ッ!」
 すっかり形を変えてしまった分身も、自分の何もかもがが男の目に曝される。後ろ手に縛られている為、身を隠す術のない高耶は羞恥に顔を背けた。

 直江は、うやうやしく高耶のジーンズを下着ごと、片足づつ抜きさると、改めて高耶の上に覆い被さり、確かめるように高耶の全身を見下ろした。

 今、高耶が身に纏っているのは、完全にはだけられた白いシャツと、黒い首輪、そこから繋がれた鎖のみ。
 羞恥からか、紅く染まった体を見つめ、
「……綺麗ですよ。あなたより綺麗なものなんてこの世にない……さあ、もっと綺麗にしてあげる」

 直江はうっとりと囁いて、勃ちあがったままの高耶のものに手を伸ばし、ゆっくりと扱き出した。再び弱い部分を攻められて、高耶がヒッと身を仰け反らせる。

 直江は体を倒し、半分顔をシーツに埋めたままの、高耶の形のいい耳朶を甘噛みしながら、
「気持ちいい?……我慢しなくていいんですよ。このぼうやは、まだひとの口でイったことはないでしょう?」
そう囁き、高耶から体を起こすと、強引に細い体を抱き起こして、ベッドヘッドに寄り掛かるように座らせた。

「や……だっ……」
 男の言葉から、何をされるか想像がついてしまった高耶は、真っ赤になって脚を閉じようとしたが、直江は強い力で強引に膝を割り、高耶の下半身に顔を埋めた。

「──ッ!」
 信じられない部分に、信じられない感触。思わず身を仰け反らせた高耶の瞳が見開かれた。
「アアッ……!」
 直江は高耶の根元を片手で押さえ、一度しっかり喉奥まで含むと、指と舌と唇で、解放を促すように扱き出した。 男の頭が上下する度に、高耶は感じすぎて狂ったように首を振った。

 座らされている為に、少しでも目を開ければ、自分の股間に頭を埋める男が目に入る。
 これを見せたいが為に、直江は高耶をわざと座らせたのだった。高耶を口に含んだまま、顔を上げた直江の目が「出しなさい」と云っている。

「……ッ、……やっ、……アアッ……、」
 まだようやく自慰を覚えたばかりの高耶には、男の口と指で与えられるその刺激は、到底堪えられるものではなかった。
 両手を縛られてさえなければ、今すぐ股間に顔を埋める男を引き剥がしたいのに、それもできない。背中で縛られた腕がぎしぎしと音を立てる度に、首の鎖が音を立てた。

 きつく吸い上げられたかと思うと、舌先で敏感な先端だけをなぞられて、柔らかく袋を揉みしだかれ、舌で筋を舐め上げられ……強すぎる刺激に、一気に射精感が駆け抜ける。このままでは本当に男の口の中に出してしまう。

「……駄目……ッ、離し……!も……出ちま……!」
 高耶はプライドも何もなく、泣き声を上げて必死に身を捩って逃れようとしたが、直江はそれを叱咤するように、軽く歯を立てた。

「ヒ──ッ!!」
 電気のような痛みと痺れが駆け抜けたその瞬間───激しく身を仰のかせた高耶は、直江の口の中に放ってしまっていた。

 直江は、高耶の若い性を音を立てて飲み干すと、ようやく高耶の股間から顔を上げた。
 その口端からは、飲み切れなかった高耶のしろいものが糸をひいている。高耶は解放後の脱力感と、男の口の中に出してしまったというあまりのショックで、茫然となっていた。

 男がわざと見せつけるように、それを指先で拭うのを、高耶は悪い夢でも見るように見つめていた。

 男がにっこりと微笑んだ。
「よくできましたね。……よかったでしょう?甘いですよ、あなたのは……」
「……ヒッ……、ック……」
 啜り泣く高耶を、一瞬哀れに思ったが……ここまで来て引き返せるものではない。直江自身もそろそろ限界だった。

「さあ、高耶さん……もっと気持ちのいいことを……教えてあげる……」



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